2025.12.07
吉良貴之(愛知大学・法哲学)さんに、続編となる研究会を企画していただいたので、研究会案内ページを大幅に改定しました。
2016.03.28
作成開始

尾高朝雄の現象学的法哲学 国家論・社会団体論からノモス論争へ
──現象学と法学の対話のために──
The Phenomenological Approach to Social Reality: History, Concepts, Problems

開催の経緯と趣旨 研究会概要 募集対象 参加申込 登壇者プロフィール 参考文献
研究会「尾高朝雄の現象学的法哲学:国家論・社会団体論からノモス論争へ」(2016年6月25日) - 日曜社会学 - はてなブックマーク数

開催趣旨

 現象学者 植村玄輝・八重樫徹 両氏が執筆を進めている、法哲学者 尾高朝雄の国家論・社会団体論をテーマとする論文の構想検討会を公開で行います。すでに両氏は、最近刊行された A. Salice & H. B. Schmid 編の論文集『社会的現実への現象学的接近:歴史・概念・問題』に、

  • Genki Uemura & Toru Yaegashi, "The Actuality of States and Other Social Groups. Tomoo Otaka's Transcendental Project?"
を寄稿しており、現在はその続編を準備中です(既稿要旨と新稿構想は次項に)
 研究会当日は、
  • 執筆者のお二人から 既稿の要旨と新稿の構想をうかがい、
  • 法学専攻のお二人、吉良貴之さん・大西 楠 テアさんをゲストに迎えて コメントをいただいたうえで、
参加者の皆さんと議論の時間を持ちたいと思います。関心のある皆さんのご参加をお待ちしています。(酒井泰斗)
なお、当会でコメンテイターを務めていただく吉良さんが登壇する下記研究会も別途開催されます。併せて参加をご検討ください。
近代日本法史研究会
  • 2016年7月30日(土)14時 慶應義塾大学(三田) 研究室棟7階法学部第2研究室(745室)
  • 1:出口雄一(桐蔭横浜大学) 「戦時・戦後初期日本の法哲学における「超越」――小野清一郎、田中耕太郎、そして尾高朝雄」
  • 2:吉良貴之(宇都宮共和大学) 「尾高朝雄の法哲学――現象学的アプローチから自由論・民主主義論へ」

概要

  • 開催日時: 6月25日(土)、14:00~
  • 会 場 : 東京都山手線内側(詳細は研究会MLにて告知します)
  • 登壇者 :

募集対象・参加資格

※参加者を15名程度募集します。

  • 次の各項目のうちのいずれか(もしくは複数)に関心をお持ちの方
    • (現象学者としての)尾高朝雄
    • ノモス主権論争 (尾高・宮沢論争)
    • (初期現象学における)法哲学・社会哲学・国家論
    • 現象学と他分野の交流可能性
  • 学術論文草稿の取り扱い作法について ご存知の方
  • 検討・レビューに貢献できる方

参加申込

  • 件名を「尾高研究会参加希望」とし以下の項目を記載したメールを までお送りください。(メールアドレス以外の情報は 参加者間で共有されます。)
    1. 名前と所属
    2. Google アカウント*に登録しているメールアドレス
    3. 専門/専攻/専門分野
    4. 自己紹介(関心など)**
    5. 懇親会参加の意向
  • 申込締切: 定員に達し次第
* Google・アカウントを お持ちでない方は、こちらで取得してください: Google アカウント
** 未公開草稿について検討する会です。著名人は簡単なものでけっこうですが、著名でない方は(著名で無い度合いに応じた)丁寧な自己紹介をお願いします。

既稿要旨と新稿の目的

植村玄輝・八重樫徹

既稿The Actuality of States and Other Social Groups. Tomoo Otaka’s Transcendental Project?要旨

 本稿の目的は、フッサールの元で学んだ日本の法哲学者・尾高朝雄の社会的現実についての理論を解説し評価することであった。尾高の現象学的社会哲学の最も興味深い点は、彼が自らをフッサールの超越論的現象学の継承者とみなしていたという事実にある。この点が彼を、社会について論じた初期現象学者たちの中でもユニークな存在にしている。というのも、彼らの多くは実在論的な立場から社会の存在論にアプローチし、超越論的現象学から離反しているからである。それゆえ、本稿は次の問いに導かれる。社会的現実にかんする尾高の議論は、どのように、またどの程度、フッサールの超越論的現象学のプロジェクトに統合されうるのだろうか。尾高が主に1930年代に発表したドイツ語と日本語の著作を紐解きながら、われわれは彼がフッサールの構成分析のアイディアをどのように受け入れ、また現実に存在する国家やその他の社会団体に適用しようとしたのかを明らかにした。だが、彼の現象学的社会哲学には特有のジレンマが潜んでいる。彼は、国家のような社会団体の「意味」をわれわれが超感性的な仕方で直観できると主張するが、この考えは困難に直面する。しかし、このアイディアを捨て去ってしまうと、彼の構成分析はフッサール流のそれではなくなってしまうように思われる。尾高がおそらくはっきりとは自覚していなかったこのジレンマを指摘した上で、われわれは代替案を提示し、フッサール的な構成分析の枠組みの中で現実の国家を扱える可能性を示した。

新稿の目的

 尾高・宮沢論争を現象学的国家論の観点から再検討する。フッサールの超越論的現象学を背景とした尾高の国家論にとって、ノモス主権論がいかなる(政治的ではなく)哲学的な意義をもっていたのかを明らかにする。

課題

 このプロジェクトが直面する最初の問題は、ノモス主権論を現象学的な観点から論じることに文献上の直接的な根拠がないというものである。関連する尾高のテクストにはフッサールはおろか現象学に関する話題がまったく登場しない。しかし尾高は、戦前の著作から1956年の急死によって未完に終わった「現象学派の法哲学」(1960年刊)に至るまで、フッサール現象学に言及する際には、一貫して肯定的な評価をそれに加えている。そのため、ノモス主権論の哲学的な背景の一部にフッサール現象学があったことは、少なくとも作業仮説として想定することができる。するとまずもって課題となるのは、ノモス主権論を、現象学への依拠がより明らかな尾高の戦前の国家論および実定法論の延長線上に適切に位置づける作業である。

 ここで特に注意を払うべきは、戦前の尾高の著作では、国家や法の現実性ないし実在性(ドイツ語ではWirklichkeit)が論じられる文脈においてフッサール現象学がとりわけ重要視されていたという点だろう。フッサールのこうした援用がノモス主権論とはたして関連するのかということは、少なくとも一見する限りは疑わしいかもしれない。というのも尾高は、宮沢との論争を通じて、ノモス主権論を(事実ではなく)当為・理念としての主権の所在に関する立場として定式化するに至ったからである。しかしこうした疑念は、尾高が当為ないし理念を「意味(Sinn)」の一種と捉え、そうした意味の形成に関してもフッサール(およびライナッハ)から着想を得ていたことを踏まえれば解消することができる。また、戦後の尾高が当為としての主権を、それに事実としての裏付けをいかにして与えるかという問題と一組にして論じていたということも、ここで着目すべきだろう。

登壇者プロフィール

植村 玄輝
  • 立正大学人文科学研究所研究員。慶應義塾大学文学研究科哲学・倫理学専攻後期博士課程修了。
  • 専門はフッサールおよび初期現象学(ミュンヘン・ゲッチンゲン学派の現象学)。主な関心は、現象学の伝統における実在論・観念論問題、形而上学、心の哲学。
  • 論文
八重樫 徹
吉良 貴之
  • 宇都宮共和大学専任講師。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程満期退学。
  • 法哲学専攻。主な研究テーマは世代間正義論、法の時間論、法と科学技術など。「社会的に共有される時間秩序としての法」という関心から尾高を読んでいます。
  • 論文
    • 吉良貴之「年金は世代間の助け合いであるべきか?」、瀧川裕英編『問いかける法哲学』(法律文化社、近刊)
    • 吉良貴之「死者と将来世代の存在論」、仲正昌樹編『「法」における「主体」の問題』(御茶の水書房、2013年)
    • 吉良貴之「法時間論――法による時間的秩序、法に内在する時間構造」、『法哲学年報2008』(有斐閣、2009年)
  • 翻訳
大西 楠・テア
  • 専修大学法学部准教授。東京大学法学政治学研究科修了。
  • ドイツ法専攻。主な研究テーマは、連邦国家論、EUと国民国家、移民法。
  • 論文
酒井 泰斗

参考文献

研究会開催までに目を通しておくことが推奨される文献

邦語文献[と関連箇所]

法哲学と現象学について
フッサールの構成分析について
  • 八重樫徹, 2013, 「善さはいかにして構成されるのか」 博士論文 [第2章]
  • 植村玄輝, 2015, 「行為と行為すること:現象学をフッサールとともに拡張する可能性について」 第四期 情況 2015年8月号(特集:現象学). [第2節]

その他

現象学的法哲学概説

初期現象学における法哲学・社会哲学・国家論について

  • Mulligan, K. 2001. "Phenomenology: Philosophical aspects." In International encyclopedia of the social & behavioral sciences, ed. N.J. Smelser and Paul B. Baltes, 11363–11369. Oxford: Pergamon.  
    [初期現象学についていま世界で一番詳しいと目される著者による概説です。尾高のドイツ語著作への言及あり。]

ご参考

※このページの短縮URLは http://bit.ly/OtakaTomoo です。

  • Tomoo Otaka, Foundation of a Theory of Social Association, 1932
  • 尾高朝雄と法の現象学 シンポジウム

    社会団体論と初期現象学
    法哲学者・尾高朝雄の思想形成

    現象学と法学の対話2

    開催日時 2026年3月1日(日)13:30~17:30
    会場 愛知大学・豊橋キャンパス&ZOOM
    報告 高艸賢(千葉大学・社会学)、植村玄輝(岡山大学・哲学)、石川健治(東京大学・憲法学)
    司会 酒井泰斗(会社員/ルーマン・フォーラム管理人、行動科学史)
    企画 吉良貴之(愛知大学・法哲学)
    主催 愛知大学人文社会学研究所
趣旨 概要 参加申込 登壇者紹介 参考文献

趣旨

開催概要

  • 開催日時: 2026年3月1日(日)、13:30~17:30
  • 会 場 : 愛知大学・豊橋キャンパス&ZOOM(詳細は後日告知します)
  • 登壇者 :
    • 高艸賢(千葉大学・社会学)
    • 植村玄輝(岡山大学・哲学)
    • 石川健治(東京大学・憲法学)
  • 司会: 酒井泰斗(会社員/ルーマン・フォーラム管理人、行動科学史)
  • 企画・開催責任者: 吉良貴之(愛知大学・法哲学)
  • 主催: 愛知大学人文社会学研究所

参加申込

準備中

企画者・登壇者紹介

植村玄輝

  • 学術研究院社会文化科学学域准教授。フッサールにはじまるとされる古典的現象学、とりわけフッサールおよび初期の現象学運動に関する哲学史研究と、古典的現象学における議論の蓄積を手掛かりに現代哲学の問題にアプローチする哲学研究(「現代現象学」)を主に行っています。尾高研究は前者の一環として2013年から細々と続けています。関連業績や経歴などについては以下のページをご覧ください。https://researchmap.jp/uemurag/

高艸 賢

  • 千葉大学大学院人文科学研究院助教。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。
  • 専門はアルフレート・シュッツ研究、現象学的社会学、文化社会学。尾高朝雄に関しては、20世紀のドイツ語圏と日本の社会学史という観点で調べています。
  • 論文・著書
    • 高艸賢,2023,『シュッツの社会科学認識論——社会の探究が生まれるところ』晃洋書房.
    • Takakusa, Ken, 2023, "Tomoo Otaka and Alfred Schutz: Phenomenologically Oriented Social Theories," Derek Robbins ed., Tomoo Otaka: Foundation of a Theory of Social Association, 1932, Peter Lang, 327-342.
    • 高艸賢,2024,「戦後ドイツ社会学史の舞台としてのフランクフルト大学——経済・社会科学部の社会学者たちから見た社会研究所」『思想』1208: 82-96.

石川 健治

  • 論文・著書

酒井泰斗

吉良貴之

  • 愛知大学法学部准教授。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程満期退学。
  • 法哲学専攻。主な研究テーマは世代間正義論、法の時間論、法と科学技術など。「社会的に共有される時間秩序としての法」という関心から尾高を読んでいます。
  • 論文
    • 吉良貴之「年金は世代間の助け合いであるべきか?」、瀧川裕英編『問いかける法哲学』(法律文化社、近刊)
    • 吉良貴之「死者と将来世代の存在論」、仲正昌樹編『「法」における「主体」の問題』(御茶の水書房、2013年)
    • 吉良貴之「法時間論――法による時間的秩序、法に内在する時間構造」、『法哲学年報2008』(有斐閣、2009年)
  • 翻訳

参考文献