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松本三和夫『構造災-科学技術社会に潜む危機』(岩波書店, 2012)は、知識基盤社会と呼ばれる現代社会を考える上で、重要な視座を提供しうる著作である。2002年に発表された、同著者の『知の失敗と社会―科学技術はなぜ社会にとって問題か』において既に開示されつつあった問題意識を下敷きとしつつ、東日本大震災を契機にまとめられた本書は、科学技術と社会の間の界面に見え隠れする問題群に科学社会学の視点から切り込もうとする意欲作と言える。
著者は、書名にもなっている「構造災」の持つ特徴を以下の5つの様に表現する。
- 先例が間違っているときに先例を踏襲して問題を温存してしまう
- 系の複雑性と相互依存性が問題を増幅する
- 小集団の非公式の規範が公式の規範を長期にわたって空洞化する
- 問題への対応においてその場かぎりの想定による対症療法が増殖する
- 責任の所在を不明瞭にする秘密主義が、セクターを問わず連鎖する
このような特徴を持つ構造災とは如何なるものか、「構造災」概念が捉える射程はどこまでなのか、そして実際の問題に向き合うならばどのような適用と分析が可能であるのか。 本研究会が、今後の更なる議論につながる呼び水となれば幸いである。
- はしがき
- 序章
- 構造災としての福島原発事故
- 第1章 構造災とは何か―科学社会学の視点から
- 第2章 構造災のメカニズム
- 第3章 構造災の系譜
- 第4章 いま生まれつつある構造災
- 終章 構造災をのりこえる提言
- あとがき